:::おとしだま:::
「じょーお」
後ろから声をかけられた。
丈は正月だと言うのに相変わらず問題集とにらめっこをしながら、曖昧に返事をする。
それが気にくわないのか、ゴマモンは少しだけ声を大きくしてまた声をかけた。
「ねぇ、じょーってば」
「…何だよゴマモン」
椅子を回転させ、丈は困ったようにゴマモンに向き合った。
「えっとね、」
ゴマモンは少し考えて言った。
「あけまして、おめでとー」
「…おめでとう」
丈が応えると、ゴマモンはニッと笑ってその大きな手を丈につきだした。
「えっ…と?」
何だか訳の分からないような顔で丈はその手を見つめた。
ゴマモンはニコニコしながら言った。
「オトシダマ、ちょーだい」
一瞬の沈黙。
「…はぃ?」
「だから、オトシダマ」
ねーちょうだいじょーお、とゴマモンが軽く甘えた声を出す。
丈はやれやれ、と心の中で呟いた。
「ねぇゴマモン」
財布を出しながら丈は言った。
「僕はもともとそんなにお金持ってないし、大体お金なんかもらって君はどうするんだい?」
買い物に1人で行く訳にもいかないだろ、と言うとゴマモンは不服そうな顔をした。
「違うよ、そうじゃないよ」
「…はい?」
「オトシダマってさ、黄色くて丸くて」
最近あまりTVを見ていない丈は、ゴマモンの言った事を理解し、それが何であるかを思いだすまでに少し時間がかかった。
1度しか見た事ないCMだったから仕方ないといえば仕方ないのだが。
「ゴマモン、それはもしかして」
「ラーメン?」
「そう、ラーメン」
丈の説明を聞いてゴマモンは少しだけ目を丸くした。
「オトシダマってホントはお金の事なんだ〜」
「分かったかい?」
やわらかく丈が笑うと、ゴマモンはうんうんと頷いた。
「で、“オトシダマ”の事だけど」
丈はゴマモンを抱き上げた。
「ほしいんだったよね」
「えと、オイラが欲しいのは」
「じゃあさ、」
片目をつむってみせた。
「インスタントでよければ、ラーメン作れるけど」
「やったぁ、オイラすっごく腹ぺこだったんだ〜ッ」
さんきゅー、と言って頬ずりをしてくるゴマモンは、どこまでも無邪気で。
そんなゴマモンに丈はじゃあ一緒に作ろうね、と言った。
もちろん、
「オトシダマも忘れずに。ね、ゴマモン」
→時事ネタですみません。チキン●ーメン大好きです。