:::あたたかな:::


たとえピークを過ぎていたとしていも、ファーストフード店というものはある程度うるさいものだ。
げらげらと笑う女子高生、電話に向かって怒鳴る青年に、ぼそぼそと話し込んでいる中年男性達。
そんな喧騒にちらりちらりと意識を引かれつつ、ヤマトは問題集のページを繰った。

外では、雨が降っている。冷たい冬の雨。
日が暮れて大分経つ。
雑踏を歩く人は皆屋内へと入りたがり足早に人ごみを抜けていく。


文字の羅列にも見飽きて、ヤマトは一つため息をついた。

集中できないのは、なぜなのか、自分でも分からない。
熱すぎるコーヒーと冷めたハンバーガーのせいだろうか。

何となく、曇った窓を見やる。
世界はしんとした沈黙に満ちていて。



「ああ、そうだ、」

ヤマトは少し笑って、問題集を閉じる。

――シチューにしよう。


喧騒が戻る。
ヤマトは立ち上がり、冷たく静かなざわめきにとけていく。

外は、雪になっていた。







→雨から雪に変わる瞬間が非常に好きです。    帰る場所、あたたかい食事があるということは幸せだと思います。